仮想通貨が取引所上場後に発行者が売り抜ける手口について

ICOは実績のない企業でも資金を調達できる方法として注目を集めていますが、なかには詐欺的な案件もあります。また、詐欺とまでは断定できなくても、グレーな方法で自分だけ儲けようとする者は後を絶ちません。仮想通貨が取引所に上場した直後に発行者が売り抜けをするのもそんな手口の一つです。そこで、まず「売り抜け」という言葉の意味を説明してから、仮想通貨の取引所上場後の売り抜けについて詳しく見ていきます。

売り抜けの意味と一例

売り抜けとはもともと株式取引の言葉で、保有する株の価格が下がる前にタイミングを見計らって売ってしまうことを指します。他人に見つからないようにこっそり売って、自分だけ取引から逃げるという悪い意味も含まれている言葉です。これから価格が下がる株を他人に押し付けて、自分だけ得をしようという魂胆があるからでしょう。

売り抜けは株式だけでなく、いろんなジャンルで使われる言葉です。たとえば、不動産投資では、保有する不動産の価格が下がらないうちに、他人に悟られないように押し付ける形で売り付けて、自分ひとり取引から離脱するわけです。どういう形であれ、これ以上上がらないというところまで値段が上がり切ったところで、自分の持ち分を売って逃げることが「売り抜け」になります。

売り抜けはどこにでもある

売り抜けは日本だけでなく、世界中の投資市場で利用される行為です。たとえばアメリカの不動産投資では、国土の広大さを利用して行われます。アメリカで不動産価格が高いのは、世界有数の都市であるニューヨークや西海岸の人気エリアのカリフォルニアなどですが、こうしたエリアの不動産価格がどこよりも先に値上がりします。その後、ボストン、シアトル、シカゴなどの第二戦線都市と呼ばれるエリアの価格が上昇し、次に、今後人口の増加が期待できる南部のフロリダやテキサスなどの価格が後に続くように上がっていくのです。

アメリカほどの広大な国土があると、このようにエリアごとの不動産価格に時差が生まれます。これを利用すれば、「ボストン辺りの相場が上がりそうな頃合いだから、ニューヨークの土地をそろそろ手放そうか」というふうに、うまく自分の保有する土地を値下がりする前に売りつけることが可能です。これが不動産投資での売り抜けの一例ですが、実際は、不動産に限らず売り抜けはそう簡単にできることではありません。

仮想通貨の売り抜け

仮想通貨の売り抜けも上の例で見たのと同じことで、自分の保有する仮想通貨の値段が下がる前に、タイミングを見計らって売り逃げてしまうことを指します。仮想通貨の場合、売った人や買った人が誰かなど特定は不可能ですから、個人で投資する場合は売り抜けを非難されることはありませんし、どのタイミングで売買するかは個人の自由です。

ただ、ICOを利用して仮想通貨の開発者が、上場後のタイミングを見計らって行う売り抜けは糾弾されるべきです。「上場しているのだから詐欺にはならない」とも言えますが、他人を陥れて自分だけ儲けようとする行為ですので、犯罪にはならなくともモラルには著しく反した行為と言えるでしょう。次に、取引所に上場した後に発行者が売り抜ける手口を紹介します。手口がわかっていれば被害に遭うことも防げますので、何らかの参考にしてください。

上場後に売り抜ける手口

まずは新たな仮想通貨を発行して配布するところからがスタートです。配布する方法はICOのほか、エアドロップやハードフォークという手法もあります。いずれにせよ、内容のあるきちんとしたプロジェクトに見せかけて周囲の信頼を得ることが必要です。そのためには、実態があるかのようにホワイトペーパーまで作って公開することもあります。

ほとんど無料同然でコインを配布しつつ、周りの信頼を得て仮想通貨の知名度も上がってきたら、いよいよそれを仮想通貨取引所に上場させます。コインを手に入れた人も、上場して高値が付いたら売り抜けたいと考えるため、発行者が特に宣伝しなくても勝手に宣伝してくれます。なお、大手の取引所は審査が厳しいので無理ですが、小規模な取引所ならどんな仮想通貨でもわりと上場させやすいので狙われがちです。

上場さえすれば、「上場しているのだから信頼できるはず」と思って購入する人が増えます。仮想通貨に原価などないようなものですので、いくらでも売ることが可能です。そうやって買い注文がたまったら、あとは一気に売り払って逃げるというわけです。詐欺みたいなものですが、仮想通貨の発行者が仮想通貨取引所で売り抜けるのは特に規制されていないため、購入した人の自己責任で片づけられ、売り抜けた張本人を罪に問うことはできません。

しかし、モラル的には大問題ですので、今後は何らかの規制も作られるのではないでしょうか。こうした売り抜けの手口に引っかからないためには、容易に上場できる取引所にしか上場していない仮想通貨には手を出さないことが一番でしょう。




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