ビットバンク16

ICOの浸透によりベンチャーキャピタルは衰退してしまうのか?

ブロックチェーン技術が及ぼす影響はビジネスの世界にも大きなインパクトを与えています。ico(Initial Coin Offering)という新たな資金調達の方法は、今やブロックチェーンのスタートアップ企業にとってベンチャーキャピタルにとって代わる存在となりつつあります。そこで、icoとベンチャーキャピタルがどうなっていくかを考えましょう。

icoとベンチャーキャピタルの相違

icoによる資金調達が、ベンチャーキャピタルによるのと大きく異なる点は次の3つです。まず、経営に口出しされないこと、また、企業の実績と関係なく資金調達が可能なこと、そして、資金調達がスピーディーに行えることがあります。ベンチャーキャピタルの場合、出資の見返りにその企業の株式を保有し、企業の経営にも積極的に関与します。出資を受けた企業にとってはありがたいアドバイスであると同時に、経営に干渉されたくない人にとっては有難迷惑です。

また、ベンチャーキャピタルでは、売上高など企業の実績を示せなければ出資を受けることはできません。アイデアだけで資金を調達できるicoとは大きな違いです。さらに、ベンチャーキャピタルの出資は段階的ですが、icoは短期間で資金の調達を完了できるという大きな違いがあります。

すでにベンチャーキャピタルは衰退を始めている

ブロックチェーンのスタートアップ企業にとって、未公開の通貨を発行して自力で資金を調達できるicoの方が魅力的です。実際、アメリカのある調査会社によると、2016年のブロックチェーン企業によるicoでの資金調達額は50億ドルを突破しました。一方、ベンチャーキャピタルによる出資は10億円にとどまったということです。

そのため、ベンチャーキャピタル業界は衰退を見せていると捉える人もいて、このままでは従来のビジネスモデルはもはや通用しないと危機感を覚える人も増えています。ただ、このまま衰退するに任せるわけではなく、このピンチをチャンスに変えようと新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいる人たちも大勢います。

icoは企業のあり方を変えるのか

当局による規制が及ばないこともあって、icoによる資金調達には賛否があります。数時間で何億円も調達できる可能性があるのは魅力ですが、それゆえ詐欺が多いのもicoの世界では事実です。世界中でこの状況を何とかしようとicoの取り締まりを行っており、実際、中国ではico自体を完全に禁止してしまいました。アメリカでも、2017年にicoで巨額を集めた仮想通貨の創業者を当局が逮捕しています。検挙された企業に対して「合法であるかのように複雑なマーケティングキャンペーンで装って、非合法な方法で投資を募った」とアメリカ証券取引委員会が厳しく指弾したこともあります。

そのような詐欺的なicoもある一方、まっとうなicoは企業のあり方を変える可能性を秘めたものです。企業経済の構造では、創業者、投資家、消費者という3つのプレイヤーが存在しており、多くのケースで各プレイヤーは利害を対立させています。企業が利益を上げれば消費者が損をし、投資家が利益を得れば創業者はその分少ない金額で我慢しなければいけないという具合です。icoでも各プレイヤーが異なる動機で動いている場合は多々あります。

icoに投資する人たちのなかには、短期間で利益を上げられればよいとして、購入したトークンをすぐさま売り払ってしまう人が多いのも事実です。しかし、そうでない人たちにとっては企業と自分たちの利害は一致していると認識しています。企業が消費者にトークンを直接販売する場合、企業もそのトークンを所有するため、企業も消費者も同じ投資家としての立場にいるからです。

ベンチャーキャピタルが提供できるもの

このような状況にあってベンチャーキャピタルが考えるべきは、いかにicoの時代に適応していくかです。早いベンチャーキャピタルでは、すでに2013年から仮想通貨のファンドを設立して市場に参入しています。ベンチャーキャピタルにとっても、仮想通貨やブロックチェーン業界は、流動性の大きさにより利益が見込める市場です。

今後はブロックチェーン技術がさらに浸透していく見込みが高いですから、仮想通貨やブロックチェーンに対してどう対処するかが定まっていないベンチャーキャピタルは時代に取り残されてしまうでしょう。実際、ベンチャーキャピタルはさまざまな方法で出資が可能です。icoの前の段階で出資し、プロジェクト発動の後にトークンを売却できるSAFTという出資方法もあります。流動性の大きな仮想通貨市場ではブロックチェーンの企業の方が利益を上げるのが早いですし、また、ベンチャーキャピタルがトークンを受け取れれば損切りも容易にできますから、投資機会としても有利です。

今後、icoがプロジェクトを資金で支えるのに対して、ベンチャーキャピタルは資金以前の基礎の部分を支えていくことが求められるでしょう。




関連記事一覧